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医療従事者・国家資格者のセカンドキャリア支援

【医療従事者向け】看護師・PT・OT・薬剤師が「自分の名前で動く」5つの形

夜勤明けの帰り道、スマホを開く。

看護師のnoteを漁る。
PTの副業ブログを読み込む。
作業療法士のYouTubeチャンネルを見る。
薬剤師の起業ストーリーに目を通す。

無料の情報は、もう浴びるほど集めた。
無料セミナーにも、いくつか登録した。
メルカリや転売も、少し触ってみた。

でも、集めても集めても、自分の中で線が繋がらない──。
そんな経験は、ないでしょうか。

──それは、あなたの能力の問題ではありません。

看護師として、理学療法士として、作業療法士として、薬剤師として。
20年、30年と現場で患者さんに向き合ってきた専門性は、必ず外の世界で価値を持ちます。

ただ、その価値を「自分の名前で動かす」形は、まだ多くの方が、知らないだけなのです。

今回は、看護師・PT・OT・薬剤師が「自分の名前で動く」5つの形を、整形外科医である私(Dr.EKO)の視点から、ご紹介します。

現場で20年、見えてくる「もう一つの問い」

看護師、理学療法士、作業療法士、薬剤師──。
国家資格を持って、現場で長く働いてきた方なら、たぶん心の奥のどこかで、こう感じたことがあるはずです。

「私の20年は、この組織の中だけで終わっていいのだろうか」
「私が積み上げてきたものは、もっと別の場所でも、誰かの役に立つのではないか」

これは、組織への不満ではありません。
仕事を辞めたい、という話でもありません。

むしろ、「現場の仕事は好きだからこそ、自分の積み重ねを、もう少し広く動かしてみたい」──
そういう、静かで前向きな問いです。

そして、この問いに対する答えは、すでに存在しています。
それを、5つの形に整理してお見せします。

整形外科医の私から見た、皆さんの「強み」

本題に入る前に、ひとつだけ、お伝えしておきたいことがあります。

整形外科医として、長年、看護師・PT・OT・薬剤師の方々と一緒に現場で働いてきました。
そのなかで、ずっと感じてきたことがあります。

看護師・PT・OT・薬剤師は、医師よりも「翻訳」の達人です。

少し説明させてください。

医師は、医学的に正しい言葉で診断や治療を組み立てます。
でも、その言葉は、患者さんやそのご家族には、そのままでは届きません。

その「届かない医師の言葉」を、患者さんが分かる言葉に翻訳し、生活の中で実行できる形に変えて手渡す──
これを毎日、何十人もの患者さんに対して行っているのが、看護師・PT・OT・薬剤師の皆さんです。

退院指導の場面。
リハビリの動作の説明。
お薬の飲み方の確認。
ご家族への声かけ。

これらすべてが、「医療の言葉」と「生活の言葉」のあいだを、毎日、行ったり来たりする翻訳作業です。

そして、20年、30年と現場で翻訳を続けてきた皆さんは、医師には絶対にできない「橋渡しの専門性」を、すでにお持ちです。

この強みは、診察室や病棟の外でも、必ず必要とされます。
ただ、その動かし方を、まだ習っていないだけ。

そして正直に申し上げると、私自身も、医師として教育を受けてきたなかで、「自分の専門性に値段をつける」という発想は、長らく持っていませんでした。
それが変わったのは、なにわとカリフォルニア──医療の聖域文化からもっとも遠い、二つの土地で過ごしてきたからかもしれません。
商売の話を本音で交わす文化と、価値の見立てを日常の言語にしている文化。その二つに触れてきたことが、いまの私の視点を作っています。

だから今、私は「翻訳する医師」として、ここに立っています。
看護師・PT・OT・薬剤師の皆さんが、すでに持っている「橋渡しの専門性」を、自分の名前で動かしていく形を、一緒に整理してみたいと思います。

「自分の名前で動く」5つの形

看護師・PT・OT・薬剤師が、自分の名前で動く形は、5つに整理できます。

大事なのは、順番に試せるということ。
いきなり全部やる必要はありません。
形1から、自分のペースで進めていけます。

形1:現場収入(土台の形)

今の職場での働きから生まれる収入です。
病院・施設・薬局・訪問看護ステーション・治療院など、組織の中での給与。

このシリーズは、「現場を辞める」前提ではありません
むしろ、現場の経験こそが、他の4つの形のすべての土台になります。

形1を続けながら、形2〜5を少しずつ立ち上げていく。
それが、いちばん現実的な道です。

形2:現場の中で「自分の名前」を立ち上げる形

これが、もっとも入口として優しい形です。

今の職場の中でも、自分の名前を立てていける場面は、たくさんあります。

  • 院内・施設内勉強会の講師を引き受ける
  • 若手スタッフの教育担当を任される
  • 患者さんやご家族向けのパンフレット・指導用資料を作成する
  • 退院支援チームや感染対策委員会など、横断的な役割を担う
  • 学会や研究会で、自分の事例を発表する

これらは、収入が大きく変わるわけではありません。
でも、組織の中でも「○○さんに頼みたい」と名前で呼ばれる立ち位置を作ることができます。

これが、自分の名前で動く第一歩。
そして、ここで得た「教える」「伝える」「まとめる」経験が、形3以降の土台になります。

形3:伝える形(発信)

書く・話す・発信することから生まれる収入です。

  • noteでの有料記事の販売(看護師向け、患者・家族向けなど)
  • Kindle個人出版(自分の経験を一冊にまとめる)
  • YouTube・Podcast(リハビリ動画、服薬管理講座など)
  • メルマガ・有料コミュニティの運営
  • 医療系メディアへの寄稿・連載
  • 学会・市民講座・企業セミナーでの講演

看護師・PT・OT・薬剤師の皆さんは、医師よりも、患者さんやそのご家族に近い言葉を持っています。
だから、「医療の専門知識」を「読者の生活の言葉」に翻訳する力で、医師には書けない・話せない記事や動画を、作ることができます。

この強みが活きる場所が、形3です。

形4:直接届ける形(自分の名前で提供する)

組織の看板ではなく、自分の名前で、個人や組織に直接サービスを届けることから生まれる収入です。

  • 個別相談・コーチング(オンライン含む)
  • 自費の整体・ケア・カウンセリング・服薬相談
  • 自分が設計したオンラインプログラム・継続会員制サービス
  • 認定講座やプログラムを運営して、参加費を受け取る
  • 企業の健康相談アドバイザー
  • 学校・教育現場での専門家招聘講師
  • 地域包括支援センターや行政の相談員

この形の特徴は、価格を、自分自身が判断することです。
5つの形のなかで、もっとも「自分で値段をつける訓練」が必要になる場所でもあります。

形5:資産を持つ形

自分が直接働かなくても入ってくる収入の形です。

  • 株式・債券などの金融投資
  • 不動産投資
  • 共同経営者として法人に参画する
  • 自分が設立または出資した法人からの配当

医師より給与水準が低い分、最初は少額からのスタートになります。
でも、形2〜4で「自分の名前で動かす」経験を積み重ねるなかで、自然と形5への扉も開いていきます。

3人の医療従事者の、ある一日

ここで、複数の形を持つ3人の医療従事者の働き方を、ご紹介します。

40代・看護師のAさん(東京)

  • 平日:総合病院の病棟で22年勤務
  • 月に2回:院内研修の講師(若手看護師向け)
  • 月に4〜6本:看護師向けnoteで有料記事を配信
  • 不定期:単発の健診バイト(現場の応用)

組み合わせ:形1+形2+形3

Aさんは、夜勤明けにスマホでnoteや副業ブログを漁る日々が、半年ほど続いていたそうです。
ある日、自分が書いた退院指導のメモが、ご家族から「保存しておきたい」と言われたことをきっかけに、看護師向けnoteを始めました。
最初は無料記事でしたが、いまでは有料記事も書いています。
「自分の22年が、こうやって誰かの役に立つんだ」という手応えを、初めて自分の名前で受け取った、と話しています。

50代・理学療法士のBさん(神奈川)

  • 月〜金:病院でのリハビリ業務
  • 土曜:週1日のみ、自分の自費整体ルームを運営(完全予約制・一日4人)
  • 不定期:PT向けの技術解説動画をYouTubeで配信
  • 年に2回:理学療法士会の地方研修で講師を担当

組み合わせ:形1+形2+形3+形4

Bさんが自費整体ルームを始めるとき、いちばん悩んだのは「値段」でした。
最初は近隣の整体院と同じくらいの価格に設定し、参加者の反応を見ながら、半年ごとに見直していった、と話しています。
「保険の枠を超えて、この人のために、この時間を使う」という働き方を、自分の名前で実現できるようになりました。

60代・薬剤師のCさん(地方都市)

  • 週3日:調剤薬局で勤務
  • 週1日:地域の中小企業の健康相談アドバイザーとして訪問
  • 不定期:服薬管理についてKindle個人出版(高齢のご家族向け)
  • 地元行政から:お薬講座の講師依頼(年4回)

組み合わせ:形1+形3+形4

Cさんは、還暦を超えてから、企業健康相談の仕事を始めました。
最初は知人のつてで一社だけでしたが、活動が口コミで広がり、いまでは複数の中小企業から定期的に声がかかります。
「自分の薬剤師としての35年が、診療所の外でも、こんなに必要とされていたのか」と、本人がいちばん驚いている、と話しています。

3人とも、「複雑なビジネスを立ち上げた」わけではありません。
自分の専門性を、自分のペースで、現場の外にも届けているだけです。
スマホとPC、そして20年以上現場で培ってきた「橋渡しの専門性」があれば、できることばかりです。

※ 上記のA・B・Cさんは、説明のために構成した架空の人物像です。

値段をつけられるようになるための、いちばんの近道

ここまで読んでくださって、こう感じている方もいるかもしれません。

「形4の話、興味はある。でも、自分のサービスに、いくらの値段をつけていいかが、わからない」

これは、看護師・PT・OT・薬剤師の方が、もっとも難しいと感じる場面です。

医療業界の中では、給与は組織が決めて、診療報酬は国が決める。
「自分のサービスは、いくらか」を自分で値踏みする訓練は、長い臨床経験のなかでも、ほとんど積めません。

これには、わりと明確な答えがあります。

まず、自分が「いい値段で価値を受け取る側」を経験することです。

たとえば──

  • 高い本を読む。「これが3,500円の本か」と、自分の中で値踏みする
  • 有料記事を買う。「この情報に1,500円払う価値があったか」と、自分で振り返る
  • 有料の相談やコンサルティングを受ける。「90分でこの内容なら、安いか高いか」を、体感する

こうした経験を重ねるうちに、自分の中の「値踏みの目盛り」が、少しずつ目覚めていきます

逆に、無料の情報だけを集め続けていると、いつまでも目盛りは育ちません。
情報の量は増えていくのに、値段の感覚だけが置き去りになる──そんな状態が、続いてしまうのです。

そして、ここでもう一つの壁にぶつかります。

「無料じゃダメだ、ということは分かった。でも、誰に払えばいいかが分からない

これは、本当に大事なつまずきです。

看護師・PT・OT・薬剤師にとっては、医師よりも、もっと深刻な問題です。
なぜなら、皆さんの仕事を本当に理解した上で、外の論理に翻訳してくれる相手は、医師にとっての翻訳者よりも、さらに少ないからです。

たとえば、こうです。

  • 看護師の臨床知を理解できる人で、なおかつビジネスの価値を見抜ける人
  • 理学療法士の動作分析を理解できる人で、なおかつ自費ビジネスの相場感を持っている人
  • 薬剤師の服薬指導の現場を理解できる人で、なおかつ企業の健康相談の市場価値が分かる人

こうした条件をすべて満たす人は、日本にはまだ、ほとんどいません。

だからこそ、稀な相手を見つけることそのものが、最短コースの一部です。
そして、見つけたら、相応の値段でお金を払って教えを請う。
それが、自分の中の値踏みの目盛りを目覚めさせる、もっとも確実な道だと、私は見ています。

医療従事者として「自分の名前で動く」第一歩は、開業でも独立でもなく、まずここから始まる場合が多いのです。

散らかった動きが、線として繋がるとき

もしあなたが、夜勤明けにスマホでnoteを漁り、副業ブログを読み込み、無料の動画を見尽くしてきた──そして、こう感じているのなら、いまの内容は、特に大事なことかもしれません。

「動いてはいる。でも、自分の中で、なぜか線として繋がっていない」

そう感じるのは、能力の問題ではありません。
動いているからこそ、散らかって見えるのです。

これも、構造の話です。

医療業界の中だけにいると、自分の活動を整理する「棚」を持っていないからです。
だから、note、YouTube、メルマガ、無料セミナー、メルカリ、健診バイト──これらすべてが、それぞれ独立した「副業の試み」のように見える。

でも、整理棚で見ると、これらは全部、5つの形のどこかに属する活動です。

  • 院内勉強会で講師を引き受けたのは、形2「現場の中で名前を立ち上げる」
  • noteを始めたのは、形3「伝える」
  • 有料記事に踏み切ったのは、形3の中での「市場に値段を試した」一歩
  • 健診バイトを始めたのは、形1の応用(現場の外で働く感覚を取り戻す)
  • 自費セッションを試したのは、形4「直接届ける」

整理棚を持つだけで、自分が今、どの形で何をしているかが見える。
散らかっていたのではなく、棚がなかっただけだった、と気づくはずです。

そして、棚が見えれば、次に何を強化すべきかも、自然と見えてきます。
「自分は形2と形3は試してきたから、次は形4を組み立ててみよう」
「形4を充実させるには、形3の発信が土台になる」
──そういう、戦略の選択肢が、目の前に並びます。

お伝えしたかったこと

シリーズ「医療従事者トラック」第1回として、お伝えしたかったのは、これだけです。

看護師・PT・OT・薬剤師として20年、30年と積み上げてきた「橋渡しの専門性」は、必ず現場の外でも価値を持ちます。

ただ、その価値を「自分の名前で動かす」形は、これまで誰も教えてくれなかっただけ。

5つの形は、特別な才能がなくても、順番に試していけるものです。
そして、その目線を育てる最初の一歩は、開業でも独立でもなく、「いい値段で価値を受け取る側を、自分で体験してみること」から始まります。

そこから、皆さんの専門性は、少しずつ「自分の名前で動く」資産に変わっていきます。

次回(第3回)について

次回は、シリーズ第3回として、日本の医療従事者が「臨床1本」を選びやすい3つの構造的理由を見ていきます。

医局制度、保険診療制度、終身雇用文化──。
日本固有の3つの構造が、私たち医療従事者の働き方を、独特の形に決めています。

でも、それは私たち個人の意志の弱さではなく、強い構造の話です。
構造が見えれば、抜け方も見えてくる──そんな話を、第3回でお届けします。

まとめ

  • 看護師・PT・OT・薬剤師が「自分の名前で動く」形は、5つに整理できる
  • 形1:現場収入(土台)/形2:現場の中で名前を立ち上げる/形3:伝える/形4:直接届ける/形5:資産を持つ
  • 大事なのは、順番に試せること。いきなり全部やる必要はない
  • 医療従事者は、医師よりも「橋渡しの専門性」を持っている。それが現場の外でも強みになる
  • 値段をつける目線は、後から訓練できる。最初の一歩は「いい値段で価値を受け取る側」を経験すること
  • 「誰に払えばいいか分からない」のは、看護師・PT・OT・薬剤師の臨床知を理解できる翻訳者が、日本にまだほとんどいないから
  • 散らかって見える動きも、5つの形という整理棚を持つと、線として繋がってくる

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キャリアラボについて

医師・看護師・理学療法士・作業療法士・薬剤師など、国家資格を持つ方のキャリア戦略相談を行っています。詳しくは第5回でお伝えします。

気になる方はキャリアラボの案内ページから。

Dr.EKO博士
Dr.EKO博士(YAEKOFU)
医師・医学博士。スタンフォード大学でEIを学び、スラトレ®(メンタル思考トレーニング)を創始。医療現場で消耗する専門職を見てきた経験から、心の消耗を手放し、資格と経験を生かすセカンドキャリアを探る方を応援しています。